歴史をひもとけば、関東で甘い味が好まれるようになった背景には江戸時代の文化が深く関わっている。当時、砂糖は超がつくほどの高級品。ハレの日のごちそうとして、卵と砂糖をたっぷり使った厚焼き玉子が重宝されたのだ。濃口醤油と砂糖のガツンとした甘辛さは、江戸っ子の好みに見事に合致した。
一方、昆布出汁の文化が根付く関西では、素材の風味を活かす薄口文化が主流。砂糖を入れず、出汁を限界まで含ませた「出汁巻き」が至高とされてきた。同じ日本でありながら、車で数時間移動するだけで味付けの常識がガラリと変わる。この境界線は箱根の山付近にあるとも言われ、今なお文化人類学的な面白さを秘めている。