翻って2026年の現在。AIによるリアルタイム音声チェックや、極限まで高められた放送倫理ガイドラインにより、生放送で「放送禁止用語」が飛び出す余地はほぼゼロに等しい。失言一つでSNSが爆発的に炎上し、企業のスポンサー撤退とアカウント削除が即座に執行される時代だ。
80年代のあの大雑把で破天荒なテレビ文化と、現在の徹底的に管理されたメディア空間。松本明子の事件は、その両極端な時代のちょうど境目に位置する。当時は「過激な演出の犠牲者」という側面も強かったが、現代ではそもそもそうした「事故を起こせる隙間」すらメディアから失われてしまった。安全と引き換えに、何か決定的な人間味や熱量がテレビから削ぎ落とされたのではないかという問いが、今なお議論されている。