「あの時、僕が見ていた景色は、テレビの画面に映っていたものとはまったく違っていたんです」
静かな語り口の中に、不屈の芯の強さを漂わせながら、原田雅彦氏は切り出した。長野の金メダルから長い月日が流れた今、彼は競技の第一線を退き、指導者や組織の要職を歴任しながら、日本のスポーツ界を陰から支え続けている。しかし、世間が知る彼の姿は、常に満面の笑みと「ふなきー!」という叫び声に象徴される、感情豊かな愛されキャラの枠に留まりがちだ。
今回の独占取材で浮かび上がったのは、そうした世間のパブリックイメージとは一線を画す、冷徹なまでに冷静な「戦術家」としての素顔だった。現役時代、プレッシャーに潰されそうになりながらも彼が踏み切り台に立ち続けた背景には、メディアには一切明かされなかった極秘のメンタルトレーニングと、独自の風向解析アプローチが存在していたという。「笑顔は、自分の中の恐怖を抑え込むための唯一の防具だった」。そう回想する彼の言葉は、あまりにも重い。