すべての始まりは、コンクリートの壁に囲まれた灰色の世界だった。アメリカ合衆国連邦刑務所の冷酷な監房で誕生した「ティアドロップ(涙滴)」のタトゥー。受刑者同士が互いの過去を一瞬で識別するための、血塗られた視覚的IDだったのだ。
ストリート・カルチャーにおける暴力の現場で、涙のデザインが示す内容は一切の容赦がない。クリップスをはじめとする凶悪なギャングの世界において、目元の輪郭だけの涙は「殺された仲間への追悼」あるいは「未遂に終わった復讐」を意味する。対して、黒く塗りつぶされた涙は「他者の命を奪った証」あるいは「服役した長い歳月」の刻印だ。一滴、二滴と増えるごとに、その人物が背負う罪と復讐の重みが跳ね上がる。