八王子の気温が夏冬問わず極端な数値を叩き出す最大の要因は、街を包み込む独特の「すり鉢状の盆地地形」にあります。八王子市街地は、西側に標高の高い関東山地(陣馬山・高尾山系)、北側に加住丘陵、南側に多摩丘陵が広がり、東側のみが関東平野へと開けています。この地形構造が、季節ごとに異なる気象トラップを形成しているのです。
まず夏場においては、日射によって熱せられた空気が周囲の山や丘陵に遮られ、市街地の上空に滞留します。海から遠く離れた内陸部であるため、日中の気温上昇を緩和してくれる涼しい海風(東京湾からの南風)の到達が都心部に比べて数時間遅れます。さらに、都心部のビル群やアスファルトで熱せられた空気の塊が南東の風に乗って内陸へと運ばれ、山にぶつかって行き場を失うことで、八王子周辺に熱気が濃縮されるのです。
一方、冬の寒さを生み出す主犯は「放射冷却現象」と「冷気湖(れいきこ)」の形成です。冬の晴れた夜間、地表の熱は宇宙空間へ向けて急速に逃げていきます。周囲の山々で冷却された重い空気は斜面を滑り降り、底にあたる八王子盆地へと流れ込みます。すり鉢の底に冷たい空気のプールが溜まるため、早朝には氷点下5℃を下回るような強烈な冷え込みが日常的に観測される仕組みです。