リレーにおいて「足の速い4人を揃えたチーム」が必ずしも勝てない理由は、運動力学とスプリント構造にあります。100mを走る際、選手は静止状態のゼロキロからスタートするため、前半の加速区間に大きな時間とエネルギーを消費します。しかし、リレーの第2走者以降は、すでに助走をつけてトップスピードに乗った状態でバトンを受け取ることが可能です。
ここで生まれるのが「バトンパスによる利得」です。受け手が十分なリードを取り、トップスピードに達した瞬間に次走者へバトンが渡れば、チーム全体として加速ロスを最小限に抑えられます。反対に、バトンパスの受け渡しで立ち止まったり、スピードを緩めたりしてしまうと、1回のパスで0.5秒〜1.0秒前後のタイムロスが即座に発生します。
3回のバトンパスすべてでロスが重なれば、チーム全体で2秒から3秒もの遅れに直結します。100m走において2秒の差を埋めるのは極めて困難ですが、リレーであればバトンパスの精度を高めるだけで、個人の走力差を完全に帳消しにし、大逆転を果たすことができるのです。