映画やドラマが描く「高級外車を乗り回し、札束を懐に入れるヤクザ」の姿は、いまや一握りの最高幹部にのみ許された幻想に過ぎません。現場で広がるヤクザ平均年収の格差と、下部組織を覆うヤクザ貧困化の真相は凄惨を極めています。
「組長クラスになれば月数千万円のシノギを動かしているが、部屋住みや若い衆は月収5万円にも満たない。ファミレスの食事代すら先輩組員に頭を下げて工面してもらう毎日だった」——かつて指定暴力団傘下の二次団体に所属していた元組員の手記には、痛切な肉声が綴られています。上位団体へ毎月納めなければならない「上納金(会費)」は一人あたり十万〜数十万円単位で義務付けられており、稼ぐ力のない末端組員は上納金を捻出するために借金を重ね、自滅していく構造が固定化しています。
口座開設を拒否され、アパートの賃貸契約すら結べない暴排条例の制約下で、シノギを失った下位構成員による生活困窮型の犯罪が激増しました。警察白書のデータでも、暴力団員によるスーパーでの食料品万引きや、高級魚介類の密漁、農作物の窃盗といった「貧困型犯罪」による検挙例が目立ちます。ヤクザの世界は今、少数の経済的エリート幹部と、生活保護すら申請できずに社会の底辺を漂う膨大な下部組員という、極端な二極化社会に突入しています。