物語の骨子として語られているのは、北欧デンマークの寒風吹きすさぶ街角にある小さなベーカリーでの出来事です。身なりがみすぼらしく、ポケットの中にあったわずかな小銭をかき集めて立ち尽くす人物に対し、店主が取った行動が話の中心となっています。
語り継がれるあらすじの概要は次の通りです。凍える手でカウンターに差し出されたのは、わずか10クローネ硬貨1枚。現地の物価からすれば、棚に並ぶ焼きたてのハードブレッドを買うには到底足りない金額でした。しかし店主は「ちょうど10クローネで買える焼きたてのパンがあるよ」と告げ、本来なら倍以上の値がつく大きなライ麦パンを手渡します。
タダで恵んでもらうことを拒み、自力で生きたいと願う客のプライドを傷つけることなく、店主は「正規の取引」としてパンを売る形式を取りました。この「施しではなく商取引として成立させた配慮」こそが、このエピソードが時代を超えて語り継がれる最大の要因となっています。