この離婚の背景を語る上で避けて通れないのが、父・三國連太郎という巨大な怪物の影だ。かつて幼少期の佐藤を捨て、役者としての狂気のみに生きた父。佐藤は少年時代、その父を激しく憎み、軽蔑すらしていた。しかし皮肉にも、自らがカメラの前に立った瞬間、同じ役者の血が暴れ出すのを感じざるを得なかったという。
「家庭人になれない父」を反面教師にしようと誓いながら、自らもまた家庭を維持できないという残酷な相似形。前妻との破綻は、彼にとって父の呪縛をまざまざと見せつけられる精神的拷問でもあった。自分の中に潜む三國連太郎という劇薬とどう対峙すべきか。その苦悩は、スクリーン越しにも伝わるほどの鋭利な刃となって彼の演技を研ぎ澄ませていく。