音楽サブスクリプションで数千万曲が瞬時に聴ける時代に、カセットテープの売上が右肩上がりを続けている。タワーレコードなどの大型CDショップでは、特設のテープコーナーが拡大の一途をたどる。ノイズの混じる音質、A面からB面へとひっくり返す手間、巻戻しの時間。効率化の対極にあるプロセスが、逆に若者の所有欲を刺激している。
VHSビデオテープの再評価も顕著だ。あえて解像度の低い粗い映像で自主制作映画を撮り、テープで限定販売するインディーズクリエイターが急増。高精細な4K・8K映像に囲まれる現代人にとって、ぼやけた画質と走査線の揺らぎは、人間の温もりや叙情性を伝える芸術的表現として機能しているのだ。