洗剤の効果が科学的に証明されている一方で、製造元である化学品・日用品業界と、専門の害虫駆除産業の間には、この対処法に対するスタンスの違いが存在する。花王株式会社をはじめとする大手洗剤メーカーは、食器用洗剤の本来の用途が「油汚れの洗浄」であることを前提としており、害虫駆除目的での使用を公式に推奨しているわけではない。安全データシート(SDS)や製品ラベルにも、虫への直接噴射を想定した記載はない。
一方で、アース製薬などの殺虫剤専業メーカーは、ピレスロイド系薬剤を用いた神経遮断や、近年主流となっている冷却ガスを用いた瞬間凍結技術など、家具や床を汚さずに衛生的に処理できる専用製品の開発にしのぎを削る。洗剤を床や壁に大量に撒けば、滑って転倒する危険や家電製品のショート、フローリングの変色といった二次被害が懸念されるからだ。
日用品としての洗浄力と、専用品としての駆除性能。両者の業界が描く安全基準の境界線を知ることは、緊急時の賢い判断材料となる。