『孤独のグルメ』で実食ドラマの第一人者となった俳優の松重豊。そして、映像の細部にまで徹底的なリアリティを追求する演出家の石川修平。この強力なタッグが組み合わさったことで、作品の奥行きは飛躍的に増した。
松重豊の演技は実に滋味深い。セリフを極限まで削ぎ落とし、咀嚼する音、表情の微小な変化、そして箸を置く仕草だけで登場人物の人生の重みを語り尽くす。石川修平は「食を通して描きたいのは、完璧ではない人間たちの不器用な愛おしさ」だと周囲に語っている。派手な事件は起きない。しかし、店を訪れる客たちの言葉少なな会話から滲み出るヒューマンドラマとしての完成度が、観る者の心に静かな波紋を広げていく。