江戸古地図を読み解く上で、最もポピュラーかつ実用的なのが、幕末に版元・尾張屋清七が刊行した「尾張屋板(おわりやばん)江戸切絵図」です。江戸全体を30数枚のエリアに分割して出版されたこの切絵図には、独特のグラフィカルなルールが採用されています。
- 大名屋敷の表記:四角い枠内に大名の家紋と名前、石高、官位が記されています。上屋敷(当主の居所)は家紋のみ、中屋敷や下屋敷(別邸・隠居所)は「中」「下」の文字が添えられます。
- 色分けのルール:武家地は白地、寺社地は赤(朱色)、町人地は灰色(墨色)または青系、道は黄色で塗分けられており、一目で身分ごとの居住エリアが判別可能です。
- 文字の向きの秘密:文字が地図の中心や主要街道に向かって放射状に書かれており、「地図を手に持って回転させながら歩く」ことを前提に設計されています。
東京の地名由来の真相も、この切絵図から明快に読み解けます。例えば「神御蔵(かみおくらす)」が転じた「神楽坂」、鷹狩りの鷹匠が住んでいた「鷹匠町(現・市谷付近)」、鍛冶職人が集められた「鍛冶町」など、地名そのものが江戸城下の都市計画の設計図となっています。
原資料を直接確認したい場合は、「国立国会図書館デジタルコレクション」の活用がおすすめです。検索窓に「江戸切絵図 尾張屋」と入力するだけで、幕末に刷られた鮮やかな原図をログイン不要・無料で閲覧でき、超高解像度のJPEG画像をダウンロードして細部まで精査できます。