白菜の約95%は水分で構成されています。何も考えずに全体を同じ大きさの「ざく切り」にして鍋へ投入すると、葉先から急速に水分が抜けて出汁が薄まる一方、肉厚な芯には熱と味が届かないという構造的な不均衡が生じます。
日本料理店や専門店の調理人が必ず実践しているのは、白菜の細胞壁と繊維の方向(走行)を意識した包丁使いです。白菜の芯部分には縦方向に強固な維管束(食物繊維)が通っており、そのまま加熱しても出汁が内部へ浸透しにくく、青臭さが残りやすくなります。
包丁を斜めに寝かせて削ぐように切る「そぎ切り」や、繊維に対して直角に隠し包丁を入れる技術を用いると、強固な細胞壁が適度に破壊されます。これにより、白菜内部の糖分(グルコース・フルクトース)がスープへ溶け出しやすくなると同時に、昆布や鰹、鶏ガラなどの旨味アミノ酸が短時間で芯の中心部まで吸い込まれるのです。