なぜ当時の審判団は、あの明らかなハンドを見落としたのか。長年にわたり検証が重ねられてきた。
主審を務めたチュニジア出身のアリ・ベンナセル氏は後年、「私はゴール前の死角にいた。線審を務めていたブルガリア人のボグダン・ドチェフ氏の旗が上がっていないか確認したが、彼は動かなかった」と語った。一方のドチェフ氏は「当時、線審が主審の判断に口を挟むことは禁じられていた」と反論。通信機器が存在しなかった時代背景と、人間の視野の限界、そして超満員のスタジアムが放つ異様なプレッシャーが重なり合った結果生まれた、奇跡的な死角だった。