道頓堀の観覧車「えびすタワー」が一般的な観覧車と決定的に異なるのは、その幾何学的な構造にあります。円形ではなく縦長の長円形軌道を描く観覧車として、2005年の開業当時に世界初となる長円形観覧車として設計・建設されました。中央には巨大な商売繁盛の神様「えべっさん(恵比寿様)」とドン・キホーテの公式キャラクター「ドンペン」が鎮座し、圧倒的な存在感を誇ります。
なぜ円形ではなく長円形を採用せざるを得なかったのか。その背景には、道頓堀という超一等地の極めて過密な都市構造がありました。道頓堀川に面した敷地は間口が限られており、通常の円形観覧車を設置すれば隣接地や河川上空の空間権・景観規制に抵触してしまいます。そこで、ビルの壁面を活用して垂直方向に高さを稼ぐ独自のレールシステムが開発されたのです。4人乗りの水平回転式ゴンドラが32台連結され、乗車直後にゴンドラ自体が180度旋回して道頓堀の街並みに正対するギミックは、当時の建築技術の枠を集めたものでした。
しかし、その歩みは平坦ではありませんでした。開業からわずか3年後の2008年にレールのき裂などの機械的不具合が発覚し、運行停止を余儀なくされます。以降、約10年間にわたり「動かない巨大モニュメント」としてネオン看板の役割のみを果たしていました。地元住民や観光関係者からも再開を望む声が上がり続ける中、約2億5000万円とも報じられる巨額の改修費用と精密な安全検証を経て、2018年1月に待望の復活運行を果たした経緯があります。現在稼働している姿は、ミナミの再生と執念のエンジニアリングが生んだ結晶と言えます。