1990年代後半に入ると、ドラマのテイストはより洗練され、日常のリアルな空気感を重視する方向へとシフトしていく。その頂点に降臨したのが『ロングバケーション』である。木村拓哉と山口智子が醸し出す軽妙で自然体なやり取りは、テレビドラマ業界における会話劇のセリフ作りや演出法を劇的に一新させた。
「神様がくれた休みの期間」というポジティブなメッセージは、時代の閉塞感に悩む若者たちのバイブルとなった。スーパーボールがマンションの窓から跳ね返ってくる印象的なカットや、ピアノの旋律が織りなす空間美。それまでの劇伴に頼らない映像美とサウンドトラックの融合は、ドラマ音楽のあり方までをも塗り替えたのである。