この店を語る上で外せないのが、伝説のアパート「トキワ荘」に集った若き才能たちとの絆だ。日本の漫画界を切り拓いた手塚治虫をはじめ、藤子・F・不二雄や藤子不二雄Ⓐといった巨匠たちが足繁く通い、あるいは出前を取ってエネルギーに変えていた。
藤子不二雄Ⓐの自伝的名作『まんが道』に登場する、丼から立ち上る湯気と「ンマーイ!」という至極の叫び。そのモデルとなった名物ラーメンは、鶏ガラベースの澄んだ醤油スープに中細縮れ麺が泳ぐ、極めてシンプルな一杯だ。一口すすると、奇をてらわない実直な旨味がじんわりと広がる。この味こそが、世界に誇る日本のサブカルチャーを育て上げた原動力だったのだと実感させられる。