東京郊外の大規模団地。かつて日本の高度経済成長を象徴したその場所は、主人公・渡会悟にとっては世界のすべてだった。久保寺健彦による同名小説を原作とし、中村義洋監督がメガホンを取った本作は、一般的な枠組みに収まらない特異な青春映画として誕生した。
配給を手掛けたファントム・フィルムのラインナップの中でも、本作の放つ切実な空気感は際立っている。小学校の卒業を機に「団地から一歩も出ずに生きる」と決意した青年の日常は、一見すると奇妙な寓話のようだ。だが物語が進むにつれ、移り変わる時代の波と取り残される団地のコントラストが、観客の胸を鋭く突く。