アメリカ史上、最も痛烈なトラウマとして刻まれているのがベトナム戦争敗戦の理由です。当時のアメリカは第二次世界大戦の投下爆弾総量を上回る空爆(北爆)を行い、枯葉剤を散布し、最先端レーダーを配備して戦いました。それでも勝てなかった根源には、以下の3つの決定的要素がありました。
第一に、ベトコン(南ベトナム解放民族戦線)のゲリラ戦術です。密林地帯に全長200キロメートル以上にもおよぶ地下トンネル網(クチの地下道など)を掘り巡らせ、米軍の強力な航空支援を無力化しました。昼間は農民として暮らし、夜間になると神出鬼没の襲撃を仕掛けるゲリラ兵に対し、誰が敵で誰が民間人か分からない極限状態が米兵を精神的に追い詰めました。
第二に、「アメリカに勝った国歴史的背景」として特筆すべきベトナム民族の驚異的な抗戦意識です。知恵袋の歴史議論でも触れられているように、ベトナムは過去に強大な「元(モンゴル帝国)」の襲来を三度にわたって撃退し、後には中越戦争でも中国軍を押し返した頑強な軍事文化を持っています。外部勢力の傀儡となった南ベトナム政府への不信感と相まって、「祖国防衛」を掲げる北ベトナムの意志をへし折ることは不可能でした。
第三に、テレビ報道と国内反戦世論の爆発です。ベトナム戦争は「最初のリビングルーム戦争」と呼ばれ、血まみれの兵士やソンミ村虐殺事件の悲惨な実態がカラー映像でお茶の間に届けられました。1971年に流出した機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」によって政府の戦況欺瞞が暴かれ、米国内の厭戦気分は修復不能なレベルに達したのです。