五島昇の逝去に伴い、世間の注目を集めたのが「東急グループの世襲が続くのか」という権力継承の問題でした。五島家の家系図を紐解くと、昇の長男である五島哲が後継候補として常に名前を取り沙汰されていました。
哲は東京大学経済学部を卒業後、東急電鉄ではなく東急建設に入社。のちに同社の社長を務めることになりますが、昇は生前、哲に対して電鉄本体のトップを継がせる意思を持っていませんでした。それどころか、「創業家の専横がグループを腐敗させる」という強い危機感を抱き、東急電鉄のトップには横田二郎をはじめとする生え抜きのプロパー経営者を登用したのです。
この判断は、当時の財界でも極めて潔い英断と評されました。父・慶太の強烈なワンマン体制の弊害を誰よりも肌で知っていた昇だからこそ、自らの死期を悟った段階で、一族による世襲支配に終止符を打ち、強固な集団指導体制を完成させて世を去ったと言えます。