「給料をおろすだけなのに、なぜこれほどの手数料を徴収されるのか」――ファミリーマートのATM前で感じる素朴な疑問の裏には、銀行業界を取り巻く深刻な構造変化が存在します。みずほ銀行ATM手数料改定の理由と真相を紐解くと、メガバンク各行が抱える現金インフラの維持負担という切実な問題が浮き彫りになります。
かつてみずほ銀行イーネット手数料値上げの経緯を振り返ると、平日日中の手数料は110円に据え置かれていた時代が長く続きました。しかし、2020年代前半にかけて同行は手数料体系を大幅に改定し、平日日中を220円、夜間や早朝、休日を330円へと引き上げました。取材に応じた大手金融機関の決済企画担当者は、その背景を次のように明かします。
「ATM1台を維持・運用するためには、機体の減価償却費に加え、警備会社による現金補填や輸送、通信回線費用など、月額で数十万円単位の固定費が発生します。キャッシュレス決済比率が40%を超えて伸長するなか、現金の取り扱い総量は減少しているにもかかわらず、固定維持コストはほとんど減りません。コンビニATM運営会社(イーネットなど)へ支払う接続委託料を銀行が肩代わりし続けるビジネスモデルは、すでに完全に破綻しているのです」
さらに、日本銀行によるマイナス金利政策の解除以降、銀行は預貸金利ザヤの改善に注力する一方で、「過剰なサービス提供の見直し」と「デジタルチャネルへの誘導」を急速に進めています。つまり、ファミリーマートをはじめとするコンビニATMの割高な手数料設定は、単なる収益確保にとどまらず、「紙幣を取り扱う対面・リアルチャネルから、コストの低いスマートフォンアプリへ顧客を移行させるための意図的な経済的インセンティブ(ペナルティ)」としての側面を色濃く帯びています。