シリンジ(Syringe)は、日本語では「吸子(きゅうし)」とも呼ばれる円筒形の器具です。医療機器としてはもちろん、工業用や実験用、日用品としても広く流通しています。まず理解しておくべきは、日常会話で混同されがちな「シリンジ」と「注射器」の概念の違いです。
言葉の定義として、シリンジ(針なし)は液体を吸引・計量・注入するためのピストン付き円筒容器そのものを指します。これに対して「注射器」は、シリンジの先端に注射針(金属針)を装着し、薬剤を人体や動物の皮下・筋肉・血管内へ直接注入できるようにした医療機器セット全般を指すのが一般的です。つまり、シリンジは注射器を構成する主要パーツの一つでありながら、針をつけずに単体で使う用途が数多く存在します。
シリンジの基本構造は、主に以下の3つのパーツから成り立っています。
- 外筒(バレル / Barrel):液体を保持し、表面に容量を示す目盛りが刻まれた透明な筒部分。
- 内筒(プランジャー / Plunger / ピストン):外筒の内部をスライドし、陰圧で液体を吸い上げ、陽圧で押し出す押し子。
- ガスケット(Gasket):ピストンの先端に取り付けられたゴム製パーツ。外筒との密着性を高め、液漏れや空気の混入を防ぐ役割を果たす。
現代の医療や家庭で使われるシリンジの主流は、使い捨てを前提としたディスポーザブルシリンジです。かつて主流だったガラス製シリンジのように煮沸消毒して使い回すのではなく、プラスチック(ポリプロピレン等)製でガンマ線や電子線による滅菌処理が施された個包装タイプが安全基準の標準となっています。