2013年の立ち上げ以来、株式会社サイゾーが擁するオルタナティブ・ウェブメディアとして急成長を遂げた『TOCANA(トカナ)』。その看板編集長だった角氏が、2022年2月をもって突如として退任を発表した際、メディア業界およびネット界隈には大きな衝撃が走りました。表向きは円満退社と報じられましたが、その深層にはデジタルメディアを取り巻く構造変化と、角氏自身の表現者としての葛藤が存在していました。
トカナ時代の角氏は、単なるデスクワークにとどまらず、ペルーでのアヤワスカ体験取材や樹海潜入など、体を張った潜入ルポルタージュを次々と敢行。センセーショナルな見出しとエッジの効いたオカルト記事で月間数千万PVを叩き出すモンスターサイトへと育て上げました。しかし、プラットフォーム規制の厳罰化やGoogleの検索アルゴリズム変動(コアアップデート)に伴い、大手ポータルサイトの配信基準は年々厳格化していきました。
退任前後のインタビューや関係者への取材から浮かび上がってきた「決定的な退社理由」は、以下の3点に集約されます。
- プラットフォーム規制と表現の自主規制への限界:アドセンス広告の規約変更やプラットフォーム側のコンプライアンス強化により、取り扱えるテーマやビジュアル表現に強い制限がかかるようになったこと。
- PV至上主義への疲弊と「一次情報」への回帰:日々のアクセス数を稼ぐための短文コタツ記事を量産する組織マネジメントよりも、自らの足で当事者に会いに行き、じっくりと事象を掘り下げるルポルタージュに時間を割きたいという欲求。
- 映像・音声・コミュニティ領域への全面シフト:活字中心のウェブメディアモデルから、YouTubeや映画、リアルイベントといったダイレクト課金・コミュニティ主導型のビジネスモデルへと舵を切る判断。
サイゾーという企業体の一員である以上、組織の論理や広告収益の最大化というミッションからは逃れられません。角氏は自らの好奇心と表現の純度を守るため、あえて築き上げた編集長の座を潔く手放し、完全なる独立・フリーランスとしての道を選び取ったのです。