愛猫の行動変化を評価する上で、多くの飼い主が陥る重大な認知バイアスがあります。それは「おとなしく寝ている時間が増えた=精神的な成熟・性格の落ち着き」と無条件に信じ込んでしまうことです。
野生下における猫は、捕食者であると同時に小型の被捕食動物でもあります。弱みや体調不良を外敵に見せることは即座に死を意味するため、激痛や倦怠感があっても極限まで隠そうとする習性を色濃く残しています。
例えば、高いキャットタワーの最上段に行かなくなった、あるいはソファへの飛び乗りを一度躊躇するようになった行動を「歳を取って落ち着いた」と解釈するのは危険です。実際には、変形性関節症(DJD)による初期の痛みが生じているケースが多々あります。また、日中の睡眠時間が急激に延びた場合、甲状腺機能の変調や軽度の脱水による全身倦怠感が背景にあることも珍しくありません。日常のルーティンから外れる些細な変化は、成熟ではなく「不快感の表現」である可能性を常に疑う姿勢が求められます。