魔人ブウというキャラクターを語る上で欠かせないのが、地球の格闘チャンピオンであるミスター・サタンとの友情描写だ。人類を滅亡寸前まで追い詰めた無邪気な怪物が、サタンの機転と子犬(ベエ)の存在によって改心していく過程は、『ドラゴンボール』史上屈指の名エピソードとして語り継がれている。
この名シーンの裏には、塩屋浩三と初代サタン役・故郷里大輔との深い人間関係があった。青二プロダクションの同僚として長年苦楽を共にしてきた二人は、収録現場でも阿吽の呼吸を見せていた。当時の共演者たちが振り返る手記やインタビューでは、豪快な風貌ながら誰よりも繊細だった郷里大輔を、朗らかな塩屋浩三が包み込むような温かいスタジオの空気が記録されている。
ネット上のコミュニティ(SNSやファン掲示板)でも、この二人の掛け合いに対する評価は別格だ。「サタンがいたからこそブウの可愛らしさが引き立ち、塩屋さんの愛嬌ある演技があったからこそサタンが本物の英雄に見えた」という声は今なお根強い。サタン役が江原正士に引き継がれた後も、塩屋浩三はその魂を継承するように、ゲーム作品やイベントにおいてブウとサタンの掛け合いを大切に演じ続けている。
また、塩屋浩三の卓越した演技力は魔人ブウだけに留まらない。代表作を振り返ると、その振り幅の広さに驚かされる。
- 『SLAM DUNK』:桜木軍団のムードメーカー・高宮望(陽気でコミカルな名脇役)
- 『忍たま乱太郎』:兵庫水軍の若頭・兵庫第三協栄丸(豪快だが船酔いする憎めない頭領)
- 『ONE PIECE』:ココヤシ村の駐在・ゲンゾウ(ナミを父親代わりに守り続けた情に厚い武骨漢)
- 『美少女戦士セーラームーンSuperS』:怪闘士ヨロツジカー
どの役柄にも共通しているのは、単なる悪役や端役に終わらない「にじみ出る人間味」だ。声優ファンの間でも「ブウの声優だと知らずに他の作品を見て、エンドロールの名前を見て驚愕した」という体験談が後を絶たない。