『星の王子さま』を語る上で欠かせないのが、訳者によるテキストの違いです。
日本における金字塔は、岩波書店から刊行されたフランス文学者・内藤濯(ないとう あろう)による翻訳です。「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。肝心なことは、目に見えないんだ」という詩情あふれる名訳は、半世紀以上にわたって日本人の心に刻まれてきました。
一方で、近年の新訳や子ども向け絵本版では、「大切なものは、目には見えない」といった、より口語的でストレートに心に届く表現が採用されるケースが増えています。
この名言が意味するのは、目に見える外見、地位、財産といった数字で測れるものではなく、相手のために費やした時間や愛情、信頼という目に見えない絆こそが、人生において最も価値があるという真理です。絵本版では、この核心となる哲学が子どもの日常の友情や家族愛にも重なるよう、平易かつ温かいトーンで表現されています。