糸島の風景が一躍、全国のお茶の間へ鮮烈に届けられた契機として記憶に新しいのが、橋本環奈が主演を務めた連続テレビ小説『おむすび』の放送だ。放映当時、NHKプラスなどの配信プラットフォームを通じて若い世代にもその素朴で力強い風景が拡散され、ロケ地を巡る旅は爆発的な広がりを見せた。画面越しに映し出された肥沃な農地とどこまでも広がる海は、都会のコンクリートに疲弊した現代人の琴線を強く揺さぶったのだ。
しかし、ドラマ放映による熱狂が落ち着いた現在、地域が直面しているのは「聖地巡礼」のその先にある持続的な関係性の構築だ。単に景色を消費して立ち去るマスツーリズムから、地域の文化や暮らしのテンポに深く共鳴する観光ツーリズム・ワーケーションへのシフトが急速に進んでいる。滞在時間を延ばし、地元生産者と顔を合わせる旅のスタイル。それは、メディアの熱狂を奇貨として受け止めつつ、地に足の着いた観光のあり方を模索する糸島の人々の覚悟の表れでもある。