握力は現在、世界中の医学界で「最も手軽かつ高精度な余命予測ツール」として活用されています。世界的な医学誌『ランセット(The Lancet)』に掲載された14万人規模の大規模追跡調査(PURE研究)をはじめとする数々の疫学論文において、握力の低下は全死亡リスクおよび心血管疾患による死亡リスクの上昇と直接関連していることが突き止められました。
握力が強い人は、全身の筋線維の萎縮が少なく、血管の柔軟性が保たれている傾向があります。筋肉は糖の取り込みや代謝を担う最大の臓器でもあるため、握力が維持されている個体はインスリン抵抗性が低く、糖尿病や動脈硬化の進行を抑え込みやすい生理環境にあります。
高齢期において握力が男性28kg未満、女性18kg未満に落ち込むと、筋肉量と筋機能が同時に失われる「サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)」の診断基準に該当します。歩行速度の低下や転倒による骨折、認知機能の低下を未然に防ぐためにも、握力数値を維持することは健康寿命を延ばすための防衛ラインとなっています。