街中のサロンや小顔整体で頻繁に用いられる「日常生活の癖で頭蓋骨に隙間や歪みが生じているため、骨を押し込んで小顔にする」という説明は、解剖学的に見て完全な誤りです。小顔矯正で頭蓋骨が動かないというのは、現代医学における動かしがたい共通認識となっています。
人間の頭蓋骨は23個の骨が組み合わさって構成されていますが、骨同士のつなぎ目である「縫合(ほうごう)」は強固な線維組織で結合しており、成人に達した時点で完全に癒合しています。脳を物理的な衝撃から保護する頭蓋骨が、人間の手技による数キロから数十キロ程度の圧力で動く構造にはなっていません。仮に徒手圧で骨が動くのであれば、日常生活で枕に頭を乗せたり帽子を被ったりするだけでも頭蓋骨が変形してしまうことになります。
この点については行政も明確な判断を下しています。消費者庁は過去に複数回、小顔矯正サロンを展開する事業者に対して景品表示法違反(優良誤認)に基づく措置命令を発令しました。「骨の隙間を詰めて顔を一回り小さくする」「持続的な小顔効果が得られる」といった宣伝に対し、裏付けとなる合理的な医学的根拠を示す資料の提出を求めたものの、妥当な実験データや論文が一切提出されなかったためです。
形成外科医や解剖学者による学術的な見解でも、小顔矯正の医学的根拠を証明する査読付き論文は存在しないと結論づけられています。骨格そのものが小さくなると信じて高額な施術を受けることは、医学的事実とはかけ離れた期待を抱いていると言わざるを得ません。