単行本全3巻で完結を迎えた『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』。物語の幕引きに対して、ネット上では「打ち切りなのか」「劇的なクライマックスはあるのか」と様々な憶測を呼びました。しかし、最終巻のネタバレを含むその結末は、本作の哲学を何よりも雄弁に物語るものでした。
全3巻のフィナーレにおいて、巨大な陰謀が暴かれることも、作業員たちが涙を流して抱き合うようなドラマチックな見せ場も用意されていません。描かれたのは、規定の累積被曝線量の上限に達した竜田氏が、淡々と契約期間を満了し、いわき市の宿舎を引き払うプロセスです。仲間たちと行きつけの居酒屋でビールを酌み交わし、福島への愛着を噛み締めながら、常磐線の電車に乗って東京へ帰還していく姿で静かに物語は閉じられます。
本作に対する評判と感想をAmazonレビューや読書メーター、SNSの投稿から分析すると、驚くほど高い評価が一貫して維持されています。
「原発反対・賛成のどちらのプロパガンダでもない。そこに生きる労働者の息遣いだけが克明に描かれていて、知的好奇心と人間賛歌の両面で胸を打たれた。」(大手レビューサイト読者)
「ニュース番組が絶対に伝えない『作業員の休憩所のトイレ事情』や『自動販売機のありがたみ』にこそ真実があった。すべての日本人が一度は読むべき現代の一次資料。」(ソーシャルメディア投稿)
竜田氏自身が作中で「廃炉作業は何十年も続く長いマラソンであり、自分はその第1走者のほんの数キロを走ったに過ぎない」と記した通り、この作品の完結は「事件の解決」ではなく、「これから何十年も続く日常の継続」を社会に引き継ぐための区切りだったと言えます。