イコラブの楽曲が多くのリスナー、とりわけZ世代や同世代女性の心を捉えて離さない最大の要因は、プロデューサー・指原莉乃が手掛ける詞世界にあります。従来の男性目線による「理想の少女像」ではなく、女性が内面に抱えるリアルな葛藤や劣等感、誰にも言えない執着を冷徹なまでの観察眼で描き出しています。
その真骨頂と言えるのが『あの子コンプレックス』です。歌詞内では「宝物じゃないなら 捨ててほしかった」「愛され傷付く あいつが羨ましい」といった痛烈な言葉が並びます。心理学において人間は、他者との比較によって生じる自己否定(社会的比較理論)から強い精神的葛藤を抱きますが、本作では「本命になれなかった側の孤独」が生々しく投影されています。
さらに特筆すべきは、イコラブの緻密な歌割り(パート分け)です。佐々木舞香の透明感と哀愁を帯びた歌声、野口衣織の情念を込めたエモーショナルな表現、諸橋沙夏の安定感あるソウルフルな低音など、各メンバーの声質と感情のグラデーションに合わせた配置がなされています。単なる歌唱力の誇示ではなく、物語の主人公の精神状態を声の質感で表現するアプローチが、聴く者の共感を極限まで引き出しています。
また、『絶対アイドル辞めないで』では、ファンとアイドルの間に横たわる「心理的バウンダリー(境界線)」がテーマとなっています。「プライベートは見せないで」「恋人はつくらないで」というファンの身勝手とも取れる本音を包み隠さず描きつつ、それを「推しという祈り」へと昇華させる手腕は、作詞家・指原莉乃の独壇場と言えます。