斉藤由貴の歌手デビューは1985年2月21日、レコード会社はポニーキャニオン(当時:キャニオン・レコード)でした。前年に雑誌『東宝シンデレラ』オーディションのファイナリストとなり、第3回『ミスマガジン』でグランプリを受賞した彼女は、瞬く間にトップアイドルの候補生として注目を集めます。
デビュー曲の制作にあたって起用されたのが、作詞家の松本隆と作曲家の筒美京平です。1980年代半ばのアイドルポップス界といえば、華やかでアップテンポなナンバーが主流を占めていましたが、制作陣が彼女に用意したのは静謐で哀愁漂うスローバラードでした。
松本隆は、斉藤由貴が放つ文学的な佇まいやどこか憂いを帯びた独特の存在感を見抜き、単なるアイドルソングにとどまらない情景描写を歌詞に落とし込みました。また、筒美京平による緻密なメロディラインは、派手さを抑えながらも聴く者の琴線に触れる劇的な構成となっており、当時の音楽業界関係者を唸らせる異例のデビュー戦略となったのです。