日常会話では一般的に「T字路」と呼ばれますが、道路交通法上の正式名称は「丁字路(ていじろ)交差点」(道交法第2条1項5号)と規定されています。ドライバーの間で根強く蔓延している最大の誤解が、「アルファベットのTの横棒(直線路)を直進している車両は、縦棒(突き当たり路)から右左折してくる車両よりも絶対に優先される」という思い込みです。
なぜこの認識が命取りになるのか。そのT字路優先関係の決定的な理由は、道路交通法における交差点の優先順位が「道路の形状(十文字か丁字路か)」ではなく、あくまで「客観的な規制標識」「中央線・車両通行帯の連続性」「幅員の明らかな広狭差」「左方優先」という厳格な序列によって機械的に定められている点にあります。
交差点における優先関係の根幹を定めた道路交通法第36条優先関係を整理すると、法が定める優先順位の序列は以下の通りです。
- 信号機による制御:信号の現示が最優先。
- 指定優先道路:道路標識等により優先道路と指定されている道路、または中央線や車両通行帯が交差点内を貫通して途切れることなく敷設されている道路(道交法36条1項本文)。
- 明らかな広狭差(広路優先):交差する相手の道路よりも明らかに道幅が広い道路(道交法36条2項)。
- 一時停止規制の有無:道交法第43条に基づき、「止まれ」標識がある道路が劣後。
- 法定等幅・規制なし時の原則:双方が同等の道幅で規制もない場合、左側から進行してくる車両が優先される「左方優先」(道交法36条1項1号)。
つまり、あなたが直線路側を走行していても、突き当たり側の道幅が明らかに広い場合や、自車側に一時停止標識が設置されている場合、直進しているあなたの側が「劣後(待つべき立場)」になります。「直線だから優先だ」という主観的な理屈は、警察の現場検証でも保険会社の示談交渉でも一切通用しません。