観光資源の定義と詳細まとめを確認する際、基本となるのは観光庁の公式見解や観光基本法に基づく解釈である。行政および学術上、観光資源とは「国民や国内外の旅行者の来訪を促し、鑑賞、体験、休養、学習などの観光行動を動機づける自然環境、歴史的遺産、文化的事象、生活様式などの総体」を指す。旅行者が「訪れたい」「見たい」「体験したい」と感じる理由になる要素は、すべて観光資源になり得る。
ここで重要な転換点が浮かび上がる。かつて観光資源といえば、国宝級の寺社仏閣、壮大な自然景観、あるいはテーマパークといった「非日常(ハレ)」の空間に限定されていた。しかし現在、その常識は完全に覆されている。旅行者が熱烈に求めているのは、観光用に作られた舞台ではなく、そこに暮らす人々の息遣いが残る「日常(ケ)」の情景である。
外国人観光客が地方都市のスーパーマーケットで調味料を物色し、通勤時間帯のローカル踏切にカメラを構え、地元住民しか通わない大衆居酒屋のカウンターで杯を交わす。彼らにとって、自分たちの母国には存在しない「日本のありのままの生活秩序」「地域に根付いた日常の細部」こそが、文化遺産に匹敵する強烈なエキゾチシズムと感動をもたらす。日常の風景が観光資源に昇華する決定的な理由は、「受け手側の視点(コンテクスト)において、日常が唯一無二の異文化体験へと反転するから」にほかならない。
地域の側が「何もない田舎の道」と見捨てていた畦道や古民家が、都市部や海外の旅行者から見れば「極上の癒やしと美学が宿る空間」へと価値を変える。観光資源とは固定された物体ではなく、見出し方と文脈の付与によって立ち現れる関係性の産物である。