ネット上の相談窓口や知恵袋で頻繁に見受けられるのが、「ボブだから着物に似合わないと諦めていませんか?」という疑問や、「アップにできない長さなのでダウンスタイルしか選べず、着物の格に合わないのではないか」という焦りの声です。結論から言えば、これは完全な先入観に過ぎません。適切な手順を踏めば、肩につかない長さであっても洗練された着物ボブアップ風アレンジは十分に成立します。
プロの現場で用いられる最大の裏技は、「分割ブロッキング」と「すき毛(毛たぼ)」を併用したベース作りです。ボブの場合、全体の髪を一度にまとめようとすると長さが足りず、襟足からパラパラと毛束がこぼれ落ちてしまいます。そこでスタイリストは、後頭部を「トップ」「ミドル」「アンダー(襟足)」の3段に分け、崩れの原因になりやすい襟足をまずタイトに処理します。
襟足の髪を左右2つに分け、それぞれをねじって中央で交差させ、ピンを頭皮に対して平行に打ち込む「アメリカピンのクロス留め」を行うことで、襟足の毛先が完全にロックされます。その上からミドル部分の髪を逆くるりんぱ、あるいはすき毛を芯にして巻き込みながら被せることで、外見上はまるで豊かな髪を束ねたかのような立体的なシニヨンが完成します。表参道や銀座のトップサロンで活躍する美容師たちも、「ボブ特有のコンパクトさは、むしろ頭部を小さく見せ、着物の衣紋(えもん)の抜きを最も美しく引き立てる」と口を揃えます。