パワーカーブが打者から「魔球」と評される最大の要因は、ストレートと完全に一致したトンネル(投球軌道の初期段階)から、突如として落差数十センチの急降下を見せる点にあります。打者はリリース直後の約0.1秒で球種を識別しますが、パワーカーブは初速の段階で山なりの軌道を描かず、直球と同じ一直線のラインを保ちます。そのため、打者が「高めのストレート」と認識してスイングを開始した瞬間、ボールはベースの手前で急激に視界から消え去るような錯覚を生み出します。
混同されやすいスライダーとの決定的な違いは、ボールにかかる「回転軸」と「変化成分の比率」にあります。スライダーは横方向、または斜め外側への滑り成分(水平変化)を主軸とするのに対し、パワーカーブは純粋なトップスピンに近い「縦回転成分」を限界まで高めた球種です。球速帯が135km/h〜145km/hと重なるため視覚的に似て見える局面もありますが、物理的な作用力は根本から異なります。
Statcastの追跡データが示す通り、トップクラスのパワーカーブは2,700rpm前後の強いトップスピン成分を持ちながら、ストレートとほぼ変わらない初速で射出されます。従来のカーブ特有の「ボールが一度ふわりと浮き上がる山なり軌道」が一切存在しないため、打者は打撃モーションの始動を遅らせることができず、ボールが消えたような錯覚に陥るのです。