差別と区別の違いを簡単に整理するならば、その根底にあるのは「不利益や優遇の有無」と「正当な理由の有無」です。言葉の字面は似通っていますが、社会通念上および法秩序において担わされている役割は全く異なります。
まず「区別」とは、物事や人の性質、能力、状況などの違いに着目し、一定の基準に沿ってカテゴリー分けを行う客観的な行為そのものを指します。例えば、書店が語学書売り場を「英語」「ドイツ語」「スペイン語」と棚ごとに分けることや、カフェが「モカ」「キリマンジャロ」と豆の産地を分けること、あるいは音楽番組が「1990年代」「2000年代」と年代別に楽曲を紹介することは、事実に基づいた単純な分類です。そこには誰かを貶めたり、不当に機会を奪ったりする意図も結果も存在しません。
一方で「差別」とは、ある特定の属性(人種、信条、性別、社会的身分、門地、性的指向、障害の有無など)を理由に、合理的理由なく不当に不利益を課す、あるいは特定の対象のみを不当に優遇・排除する行為を指します。重要なのは、分けること自体が悪なのではなく、「分けた結果として、正当な根拠なしに権利侵害や不利益を生じさせているかどうか」という点です。
社会学における差別の定義と歴史的経緯を紐解くと、かつての差別は身分制度や人種隔離政策のように、権力側が意図的かつ構造的に制度化してきた歴史がありました。しかし価値観がアップデートされた今日では、悪意や害意の有無に関わらず、「結果として生じる格差や排除の構造」に対して厳しい目が向けられるようになっています。