親が精神論で子供を寝かしつけようとしても事態が好転しないのは、子供が寝ない決定的な理由が生理学的・生体時計のメカニズムに基づいているからです。乳幼児から未就学児の睡眠は、大人のような単なる「気合い」や「リラックス」だけでは誘導できません。子供が入眠するためには、脳内ホルモンである「メラトニン」の分泌と、覚醒をもたらす「深部体温」の低下という2つの生理条件が厳密に満たされる必要があります。
多くの家庭で見落とされがちなのが、夕方以降の光環境と入浴のタイミングです。一般的なリビングのLED照明(特に昼白色や青白色の寒色系)は数百ルクス以上の照度を持ち、幼児の未成熟な視神経を強烈に刺激してメラトニンの分泌を最大で数十パーセント抑制します。また、就寝直前の熱いお風呂は深部体温を急上昇させ、放熱が追いつかずに脳を覚醒状態へと導きます。つまり、子供がベッドで暴れたりふざけたりするのは反抗心からではなく、身体の内部が「まだ昼間である」と誤認している身体的興奮状態の結果なのです。