タイヤの寿命に関するネット上の言説には、長年の思い込みに基づく誤解が数多く流布しています。その最たるものが「油性タイヤワックスの塗りすぎ」です。足元を黒く艶やかに見せるために油性ワックスを頻繁に塗布すると、ゴムの内部に含まれている老化防止剤を溶かし出し、逆にひび割れを著しく加速させてしまいます。足元の手入れは水洗いを基本とし、保護剤を使用する場合は水性タイプを適量に留めるのが鉄則です。
また、「走行距離が年間2,000km程度だから10年経っても溝は減っていない、だからまだ使える」という認識は極めて危険です。ゴムは走らなくても酸化が進み、柔軟性を保つ油分が空気中に蒸発してカチカチに硬化します。硬化したタイヤは、濡れたマンホールや白線の上に乗った瞬間にグリップを失い、制動距離は新品時の1.5倍以上に伸びることが各テストで実証されています。
さらに日常的な落とし穴が「低空気圧の放置」です。空気圧は何もしていなくても自然に1ヶ月で約5〜10%低下します。空気圧が指定値より30%低い状態で走り続けると、転がり抵抗が増えて燃費が悪化するだけでなく、タイヤ内部の屈曲運動が激しくなって異常発熱を起こし、スタンディングウェーブ現象による高速バーストを誘発します。「月に1度の空気圧チェック」こそが、タイヤの寿命を最も延ばし、安全を担保する最良の予防保全です。