「ハウスボールで12ポンドを持つと手首が折れそうなのに、マイボールなら14ポンドが軽々と投げられる」――。これはマイボールを初めて作ったボウラーが例外なく口にする驚きです。オカルトのような現象ですが、ここには明快な人間工学と物理の理屈が存在します。
ボウリング場で貸し出されるハウスボールは、不特定多数の誰でも指が入るように、穴の大きさが意図的に大きく、親指と中指・薬指の間の距離(スパン)も極めて狭く設計されています。穴がガバガバであるため、ボールを落とさないように「親指の腹や関節を曲げて、内側から力いっぱい握りしめる(スクイーズする)」必要があります。人間の腕は、指先を強く握りしめた瞬間に前腕の筋肉が硬直するようにできており、この余計な握力がスイングのスムーズさを殺し、ボールを実重量以上に重く感じさせる元凶となっています。
一方、プロショップのドリラーがボウラーの手の骨格、柔軟性、指の太さをミリ単位で計測して穴をあけるマイボールは、指を軽く差し込むだけで真空状態(バキューム効果)に近いホールド感が生まれます。ボールを「握る」必要が一切なく、指を穴に預けたままブランコのように腕を振るだけでボールが手に吸い付いてきます。握力による無駄なエネルギー消費がゼロになるため、ハウスボールより2ポンド重いボールであっても、体感的にはむしろ軽く感じるという力学の逆転現象が起きるのです。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
「現在の重さを維持、あるいは上げるべきか」「一度ポンドを落としてフォームを見直すべきか」。この分岐点に立つボウラーに向け、技術論と身体適性の両面から客観的な判断基準を提示します。
▼重さを上げてステップアップすべき人の条件
- フォロースルーで手首が上を向いたまま(手のひらでボールを押し出す感覚)でフィニッシュ姿勢を静止できる人
- ピンの直前でボールが激しく弾かれてスプリット(特に8番・10番ピン残しなど)が多発している人
- アプローチ(助走)のテンポがボールの軽さによって早まり、下半身のタメが作れなくなっている人
- 自分の手のサイズに合わせたマイボールの作製を検討している、または既に所持している人
▼今すぐ重さを下げるか、軽量球でフォームを固めるべき人の条件
- 投球の翌日、肘の内側や親指の付け根、手首の小指側にズキズキとした痛みが残る人
- バックスイングの頂点でボールに身体が引っ張られ、上体が左右にブレてファウルライン前でふらつく人
- ボールを投げる瞬間に「ドスン」と大きな着地音を立ててしまい、レーンに叩きつけてしまう人
- 友人や同伴者の「男なら13ポンド以上持つべき」という同調圧力に流されて選んでいる人
特に日本のレジャーシーンにおいては、「重い球を投げること=男らしさ・力強さの証明」という前時代的な見栄が根強く残っています。しかし、スポーツバイオメカニクスにおいて無理な重量設定は百害あって一利なしです。周囲の視線から自らのプレイスタイルを切り離す「心理的バウンダリー(境界線)」を保ち、自分の骨格が耐えうる適正ポンドを選択できる人こそが、最終的に最も高いアベレージと美しいフォームを手に入れます。