公務員間の転職で最も注意を払わなければならないのが、金銭面における制度的落とし穴です。「公務員を続けていれば給料も退職金もそのまま引き継がれる」と思い込んでいると、着任初月に支給される給与明細を見て愕然とすることになりかねません。
まず、基本給の決定基準となる初任給決定規程の前歴換算による給与決定についてです。一般的に、前職が同種の公務員であった場合、職歴期間の100%が号俸加算の対象として換算されるケースが多いとされています。しかし、自治体によっては「類似業務」とみなされない部署間の異動(例えば教員から行政職、あるいは特別職秘書から一般行政職など)や、各自治体が独自に定める給与条例の規定により、換算率が80%程度に減額調整される事例も散見されます。この場合、同期入庁のプロパー職員よりも基本給が1〜2年分低く格付けされる事態が起こり得ます。
さらに深刻なのが退職金と年金の通算問題です。公務員の退職手当は勤続年数が長くなるほど支給率の伸び幅が大きくなる累進構造を採用しています。したがって、退職手当の計算期間が引き継がれるか否かは、将来手にする退職金総額に数百万円単位の差を生じさせます。
制度上、退職金の通算が認められるのは、旧所属と新所属の間で人事的な合意を取り交わす「割愛(かつあい)退職」の形式が成立した場合に限られます。これは主に国と自治体の人事交流や、自治体間協定に基づく計画的転籍で用いられる手法です。自らの意思で公募試験を受け、自発的に退職届を提出して移籍するケースは原則として「自己都合退職」として扱われます。この場合、前職の在職期間に応じた退職手当がいったん清算されて支払われ、新天地では「勤続1年目」としてリセットされるため、生涯退職手当総額が大幅に目減りするリスクを覚悟しなければなりません。
年金に関しては、2015年10月の被用者年金一元化以降、国家公務員共済・地方公務員共済・厚生年金が統一されたため、加入月数は合算され受給権に不利益が生じることは基本的にありません。しかし、共済組合独自の福利厚生や年金払い退職給付の積み立てには組織ごとの細かな差異が存在するため、事前の試算が不可欠です。