バンドネオンとは?悪魔の楽器と呼ばれる理由とアコーディオンとの違い

バンドネオンとは?悪魔の楽器と呼ばれる理由とアコーディオンとの違い

バンドネオンとは?悪魔の楽器と呼ばれる理由とアコーディオンとの違いについて詳しく解説いたします。専門家の見解をご覧ください。

独特の存在感に魅了され、「自分でもあの音を奏でてみたい」と憧れる音楽ファンは後を絶ちません。しかし、プロ奏者や指導現場を取材すると、極めてシビアな現実が浮き彫りになります。結論から言えば、バンドネオンの完全な独学は極めて困難であり、挫折率は9割を超えると言っても過言ではありません。

挫折の最大の要因は、前述した「目視できない非合理なボタン配列」に加え、市販の初心者向け教則本や練習用スコアが世界的に極めて少ない点にあります。ピアノやギターのように「ドレミ」の視覚的ガイドが存在せず、蛇腹の空気圧(内圧)のコントロール加減は書籍の文字や動画だけでは体得できません。不用意に強い力で蛇腹を引っ張ると、繊細な内部リードを痛め、音程が狂ってしまうリスクもあります。

さらに参入障壁となっているのがバンドネオンの値段相場とメンテナンスの過酷さです。現在でもプロ・アマを問わず最高峰の基準とされるのが、第二次世界大戦前のドイツで製造された「アルフレッド・アーノルド社製(通称:AA=ドブレ・ア)」のヴィンテージ楽器です。良質な亜鉛板リードや木材が使われた戦前の銘器は、ブエノスアイレスの湿気とタンゴの歴史を吸い込み、代えの利かない響きを持ちます。しかし、製造から80年以上が経過しており、状態の良い個体は150万〜300万円以上の高値で取引されています。

新品のバンドネオンもドイツやイタリア、アルゼンチンの工房で製造されていますが、全工程が高度な手作業であるため年間生産数はごくわずか。新品であっても150万〜250万円前後の予算が必要です。さらに、日本国内でバンドネオンを精密に調律・修復できる工房は極めて限られています。宮城県仙台市に工房を構える渡辺公章氏をはじめとする一握りの名工・リペアマンの存在があって初めて、日本の奏者たちは楽器のコンディションを維持できているのが実情です。

これからバンドネオンを始めたいと考える場合、いきなりオークションなどで正体不明の中古品を購入するのは極めて危険です。内部の蛇腹が破れていたり、リードが錆びついて修復に数十万円かかるケースが日常茶飯事だからです。まずはバンドネオンの教室・レッスンの門を叩き、講師から楽器のレンタルを受けられるか相談すること、あるいは信頼できる専門店やリペア工房の仲介で状態の保証された楽器を手に入れることが、唯一の安全な道筋となります。

高橋 健太
著者

高橋 健太

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。