「健診結果の血糖値が90mg/dLだから自分は健康そのものだ」という認識は、現代の代謝内科の現場では明確に否定されつつあります。日本糖尿病学会が定める診断基準において、食後の血糖推移には明確な正常域と境界域が引かれています。
健康な成人の場合、食事開始から時間が経過しても、食後2時間値は140mg/dL未満に収まります。これに対し、食後2時間値が140〜199mg/dLに達している状態は「耐糖能異常(IGT:境界型糖尿病)」、すなわち糖尿病予備軍の数値と判定されます。さらに200mg/dL以上に達すると、糖尿病型と診断される水準です。
問題は、空腹時血糖値が正常範囲内(110mg/dL未満、あるいはより厳格な基準で100mg/dL未満)であっても、食事の直後だけ急上昇する現象です。これが隠れ高血糖の真相です。通常の健診は10時間以上の絶食下で行われるため、昼食や夕食のたびに血糖値が160〜180mg/dLまで跳ね上がっている事実を完全にスルーしてしまいます。自覚症状が乏しいまま毛細血管が痛めつけられ、数年後に心筋梗塞や脳卒中を発症して初めて発覚するという悲劇が後を絶ちません。