「なぜ今、全国のアートファンが福井を目指すのか」という問いの答えは、同館が誇る圧倒的なコレクションの質にあります。福井県立美術館の所蔵作品の見どころを語る上で、絶対に外せない中心軸が岩佐又兵衛(1578–1650)の存在です。
織田信長に反旗を翻した戦国武将・荒木村重の子として生まれ、数奇な運命を辿った岩佐又兵衛は、越前福井藩主・松平忠直および忠昌に招かれ、約20年間にわたり福井の地で制作活動に励みました。大和絵の伝統に漢画の力強い筆致を融合させ、豊頬長頤(ほうきょうちょうい=ふっくらとした頬と長いあご)と呼ばれる独特の人物描写で知られる又兵衛の作品群は、近世初期風俗画の最高峰と称されます。
同館所蔵の『三十六歌仙図』や又兵衛派による絵巻物類は、線の圧倒的な躍動感と劇的な感情表現が鑑賞者の目を奪います。江戸絵画ブーム以降、伊藤若冲や曾我蕭白と並び「奇想の系譜」の原点として再評価が進む又兵衛の真作を、ゆかりの深い福井の地で対面鑑賞できる体験こそが、遠方から足を運ぶ最大の動機となっています。
また、コレクションの魅力は古美術にとどまりません。岡倉天心と共に日本美術院を創設した福井出身の彫刻家・山田鬼斎や、近代洋画の先駆者である木村荘八、さらにはバルビゾン派のコローやクールベなどの西洋絵画、国内外の現代版画まで、約3,000点を超える多層的な収蔵品が時期ごとにテーマを変えて公開されています。