JR武蔵小杉駅を利用した多くの人が一度は感じるのが、「南武線から横須賀線への乗り換えが1つの駅とは思えないほど遠い」という違和感です。駅構内の案内板に従って連絡通路を進むと、動く歩道が複数設置された長い通路を延々と歩かされることになります。この特異な構造が生まれた背景には、都市開発と鉄道網の歴史に起因する3つの明確な要因が存在します。
第1の理由は、「既存の南武線駅」に対して「横須賀線ホーム」が約80年遅れて新設された後付け構造である点です。南武線の武蔵小杉駅は1927年に前身が開業した歴史ある駅ですが、横須賀線(品鶴線)の武蔵小杉駅が開業したのは2010年3月のことでした。すでに駅周辺の市街地化が進んでいたため、両線を近接させて建設することが物理的に極めて困難でした。
第2の理由は、東海道新幹線の高架橋と巨大事業場に挟まれた過酷な敷地制約です。横須賀線ホームを新設する際、並行して走る東海道新幹線の軌道や、駅東側に広がるNEC玉川事業場の敷地境界を避ける必要がありました。その結果、南武線ホームと交差する直上にはホームを設置できず、南東側に約400メートル離れた位置へずらして設置せざるを得ない土木上の制約が生じました。
第3の理由は、歩行者動線の高低差とクランク構造です。地上にある南武線ホームから地下連絡通路を経由し、高架・盛土上にある横須賀線ホームへと上下移動を伴いながらクランク状に進む動線となっているため、直線距離以上の疲労感と時間的ロスを体感させる設計となっています。