認知症の進行をただ見守るだけではない。それが、この施設の基本姿勢です。入居者一人ひとりのこれまでの人生や趣味、得意分野を尊重し、日常生活の中で役割を持ってもらう試みが続けられています。例えば、かつて大工だった男性が庭の柵の修理を手伝ったり、料理が得意だった女性が夕食の味噌汁の味付けを担当したりする光景は、ここでは珍しくありません。
こうした「できることを奪わない」ケアは、認知症の周辺症状(BPSD)の緩和にも劇的な効果をもたらしています。自分の存在が誰かの役に立っているという実感こそが、何よりの薬になるのです。スタッフは黒衣に徹し、入居者の主体性を引き出す黒衣(くろご)のような存在として、日々の暮らしに寄り添っています。