婚姻関係が破綻していないにもかかわらず、家庭外の異性に惹かれていく背景には、特有の既婚者心理が横たわっています。家族社会学の視点から見ると、家庭内において個人は「夫・妻」「父・母」「家計の管理者」といった固定化された社会的役割を過剰に要求されがちです。日々の家事・育児・仕事に追われるなかで、個人としてのアイデンティティが埋没し、深刻な「役割疲労(Role Fatigue)」を引き起こします。
取材に応じた40代男性(IT企業勤務・既婚歴12年)は、自身の内面について次のように吐露しています。
「妻への不満や憎しみがあるわけではない。ただ、家庭内では『お金を運んでくる父親』でしかなく、自分の感情や存在そのものを無条件に肯定される瞬間が完全に失われていた。求めていたのは性的な関係というより、自分を一人の生身の人間として見てくれる誰かの眼差しだった」
このように、既婚者の本音の多くは「家庭を壊したい」という破壊衝動ではなく、「失われた自己の回復」という防衛機制から生じています。家庭内での会話が事務連絡のみに終始し、情緒的な交流が断絶する「情緒的コミュニケーション不全」に陥ったとき、人は家庭外に心理的安全基地(Emotional Safe Haven)を無意識に探し求めてしまう傾向があります。