本作の最大の魅力の一つは、圧倒的な叙情性を湛えたロケーション描写にある。高知県高知市を主要な舞台に据え、地元の高校生たちの揺れ動く感情が丁寧に綴られる。高知城や帯屋町商店街、鏡川の景色など、実在する風景がスクリーン上で息づき、観客をあの夏の記憶へと引きずり込む。
東京から転校してきた武藤里伽子と、彼女に振り回される杜崎拓、そして拓の親友である松野豊。土佐弁が交わされる日常の中で描かれる三者の三角関係は、ドラマチックな劇薬ではなく、むしろすれ違いや思い込みという等身大の葛藤に満ちている。これまでの過剰にドラマチックな青春アニメとは一線を画し、観る者の個人的な思春期の記憶を静かに呼び覚ますリアルな手触りこそが、今なお共感を呼ぶ真相と言えるだろう。