今作でメガホンをとる名匠パオロ・ソレンティーノは、従来の映像表現の境界線を軽々と押し広げてみせる。世界の主要映画祭を制してきた彼特有の退廃美と圧倒的な色彩感覚は、本作でも遺憾なく発揮されている。だが、今回彼が目指したのは単なる美の探求にとどまらない。
深遠なテーマを背負ったヒューマンドラマの骨格に、息もつかせぬ緻密なサスペンスドラマの仕掛けを融合させた手法は、まさにソレンティーノの真骨頂と言える。人間の内面に潜む欲望と孤独、そして赦しを巡る問いかけが、美しい映像と対比をなしながら観客の心を鋭く刺す。